⑳専門医の技術を鵜呑みにしない
美容外科において優れた医師と認められるには、病気を治療する一般の医師と少し異なる資質が必要になります。
それは医師の「センス」です。
医師に求められる資質
内科的治療では、経験の多さが治療の成績につながります。
しかし、外科手術に限っては、一概にそうとは言えません。
特に美容外科では、お客様の顔を見て顔全体のバランス、筋肉や脂肪の量、骨格、皮膚の状態などから、どこにどう手を加えたらどんな顔に変わるかを想像する美的感覚が必要になるからです。
どんなに包丁さばきが優れていても、味覚オンチにおいしい料理は作れません。
同様に、どんなに医療技術が高くても、美的感覚が優れていなければお客様の満足は得られません。
美的センスをどう判断するか
こうした技術やセンスを認定する基準があるかといえば、残念ながら現在の日本の医療界にそのような制度はありません。
「専門医」の資格を持っていれば、優れた医師なのではないかと質問されることもあります。
確かに、専門医を取得した免状を額縁に入れて院内に飾る医師もいますし、専門医が多く在籍していることをアピールする大手美容外科クリニックもあります。
そのため、実情を知らない一般の人にとっては専門医であるというだけで素晴らしい医師だと勘違いするのも無理はありません。
しかし、「専門医=優れた医師」とは限らないのです。
専門医の定義
専門医の認定やカリキュラムの作成を行う一般社団法人日本専門医機構が定める専門医の定義は次のようなものです。
「加盟している各学会と協調し、5年以上の専門研修を受け、資格審査ならびに専門医試験に合格して、学会等によって認定された医師」 |
このように定義づけられているのです。
決して「神の手と称されるようなスーパードクター」を意味するものではないと明言しています。(「新専門医制度概要Q&A」より抜粋)
つまり、専門医は標準をクリアしているだけで、優れていることの保証にはなっていません。
「専門」というネーミングが「プロフェッショナル」な印象を強く与え、お客様を混乱させているのでしょう。
美容外科医をドライバーで例えると…
少し極端な例になりますが、自動車のドライバーを例に考えてみましょう。
美容外科医はF1レーサーくらいのスキルを持っていなければならないと私は考えています。
車の普通免許を医師免許に例えると、業務で人を乗せることのできる2種免許を持つタクシードライバーは専門医と考えることができます。
専門医=タクシードライバー
車の2種免許は、講習を受けて普通免許取得時のスキルに少し上乗せすれば習得できるものです。
医師の世界での専門医も同じようなもので、既定の研修などを受けて取得するものになります。
客として乗車するのであれば、普通免許だけのドライバーより2種免許を持っているタクシードライバーの車に乗りたいのは交通ルールを順守して安全運転をしてくれると信じているからです。
専門医も同様で、技術が素晴らしいのではなく、一般の医師に比べて少し深い知識を持っているから安心して診療が受けられる、その程度のことなのです。
美容外科医=F1レーサー
しかし、美容外科医は「安心」や「安全」だけでお客様を満足させることはできません。
お客様の求める結果を達成し、時にはそれ以上の成果を生み出すセンスと技術が必要とされるからです。
車のドライバーで言えば、F1レーサー並みのテクニックに相当するでしょう。
時速200kmを超えるマシンを運転する技術と判断力、限界の速度で曲がれるセンス、そして天性の勘が求められることになります。
医師選択は慎重に
資格があればお客様を満足させられる、というわけではありません。
美容外科の施術を受けるのであれば、F1ドライバーのような医師に任せるべきなのです。
だからこそ、医師の年齢や経験年数ではなく、症例写真をたくさん見せてもらって、この医師の技術なら信頼できる、と確信できてから契約書にサインをしてほしいと思います。
ホームページから症例写真が消える!?
美容医療の広告やホームページの決まりごとは、厚生労働省が取り締まりを行っています。
2023年10月時点で施術前後、つまりビフォーアフターの写真は
・通常必要とされる治療内容 ・費用等に関する事項 ・治療の主なリスク ・副作用 等 |
これらに関する事項等の詳細な情報を記載することにより掲載が可能となります。
より厳しくなったガイドライン
以前より規制が厳しくなったことで、消費者センターへの苦情が減るなら良いのですが、問題になっているのは
・高額な施術を押し付けられた ・無理やり契約させられた ・術後の副作用や後遺症 |
といった契約や保証に関することが圧倒的多数です。
症例写真が問題になるとすれば、加工修正した写真を掲載しているケースくらいですが、実際には症例そのままの写真を掲載しているクリニックがほとんどです。
大手クリニックの例
私が以前勤務していた大手美容クリニックでは、症例写真を驚くほど大量に公開していました。
施術数が多いことは明白ですし、お客様目線で見れば、豊富な症例の中から
「このようになりたい」
という具体的なイメージができますよね。
さらに、同じ施術でも医師によって仕上がりが異なります。
派手な印象が得意な医師、キュート系が得意な医師など、違いも明らかになるため傾向と対策を練ることもできます。
GBCの取り組み
当院でも毎日のように症例写真をアップし続けています。
それが何より技術の証明ですし、普段日常的に行っている施術の結果を示しているので、医師を選ぶお客様にとって最も公平なカタログだと思うからです。
しかし、もし国が症例写真の掲載を禁止する方針で進めば、美容外科は技術の高さを伝える術がなくなります。
そうすると、言葉を使って誇大広告を行うか、値下げ合戦をするしかなくなってしまうでしょう。
結果、安かろう悪かろうのクリニックが増えれば、消費者センターに駆け込む人は現在の何倍にもなるはずです。
ホームページの正解とは
ですから、私はすべての症例をアップすることが、むしろ正解だと考えます。
そうすれば、成功例はもちろん、症例数や失敗例もすべて明らかになりますから、お客様はそれらを確認したうえで安心して医師選びができるはずです。
私が問題視しているのは、数少ない「良い写真」だけを掲載し、実力もないのに優良誤認をさせて集客するクリニックが多いことです。
そのような嘘の情報を流すクリニックにお客様が訪れてしまうことが問題です。
本当に良い施術を行っているクリニックまで影響を受ける必要はないのではないでしょうか?
まとめ
今回は美容クリニック選びで後悔しないためにチェックすべきポイントの最終項目をご紹介しました。
⑳専門医の技術を鵜呑みにしない |
当記事を読んで、「専門医」に対する印象が変わった方もいるのではないでしょうか?
美容外科医にはF1レーサー並みの技術とセンスが求められます。
肩書だけにとらわれないよう、医師選びは慎重に行ってくださいね。