瘢痕の種類
傷跡は医学用語で「瘢痕(はんこん)」と呼びます。
瘢痕は次の4種類に分類されます。
・成熟瘢痕 ・肥厚性瘢痕 ・ケロイド ・瘢痕拘縮 |
それぞれの特徴を簡単にご説明します。
成熟瘢痕
赤みを帯びていた傷が、時間の経過とともに白っぽくなった状態。
見た目が気になることで治療を行うことが多いため、ほとんどの場合保険は適用されません。
肥厚性瘢痕
深い傷の炎症がおさまらず、患部がミミズ腫れのように盛り上がった状態。
ほとんどの傷がこの肥厚性瘢痕に分類されます。
ケロイド
肥厚性瘢痕よりも炎症が強い状態であるケロイド。
原因は、やけどやニキビなどがあげられます。
瘢痕拘縮
ケロイドをケアせず放置した場合、引きつれを起こす可能性があります。
その引きつれを瘢痕拘縮と呼びます。
顔の傷跡やへこみの原因
・生まれつきのもの ・事故によるもの ・ニキビ跡 ・水ぼうそうの跡 など |
顔の傷跡やへこみは、生まれつきのあざや思春期にできたニキビ、水ぼうそうなどの疾患によるものなど、原因はさまざまです。
先天的なものは、生まれつきのあざが見られる単純性血管腫、太田母斑などがあります。
後天的なものは、皮膚疾患や感染症の経過が悪く、跡になったり凹んだりする場合が多いです。
皮膚が著しく凹んだ状態を「陥没変形」と呼びます。
この場合、皮膚の表面だけではなく真皮もダメージを負っています。
そのため、レーザー治療などではあまり効果が期待できません。
生まれつきのもの
新生児の額やまぶたに見られる赤いあざは、単純性血管腫の一種で「サーモンパッチ」とも呼ばれます。
これは、新生児全体の30%ほどに現れるもので、だいたい2歳になるまでに自然と消えていきます。
治療が必要となるのは、単純性血管腫の中でも皮膚の真皮にある毛細血管が局所的異常を起こす「先天性血管腫」や「ポートワイン母斑」と呼ばれる赤いあざです。
額や頬、鼻、まぶたなどに見られる青いあざは「太田母斑」と呼ばれ、メラニン色素が真皮で増殖することで起こります。
太田母斑はアジア系人種に多く発生する傾向があります。また、生まれつきではなく、思春期以降の女性が発症することもあります。
先天性血管腫や太田母斑は、あざの色素が皮膚の深部にあるため、外用薬などは効きにくく、レーザー治療が効果的とされています。
事故によるもの
・打ち身 ・切り傷(裂創) ・やけど(熱傷) ・骨折 など |
歩行時や運動時の転倒、交通事故や火災などで顔に傷跡やへこみが残る場合も。
傷を正しく処置せず、アフターケアが不十分だと傷跡や陥没だけではなく、ケロイドなど重篤な状態を引き起こすことも。
形成外科で手術を伴う治療を行う必要も出てきます。
ニキビ跡
思春期を迎えて、皮脂の分泌量が増えると、鼻や額などにニキビが多くできるようになります。
洗顔や役用化粧水などのスキンケアで改善する場合もありますが、なかなか治らないこともありますよね。
炎症が長引き重症化すると、赤みや色素沈着だけではなく、皮膚表面に凸凹としたクレーターが残ってしまうことも。
自力で治すことが難しいニキビ跡は、専門的なニキビ治療を選択しましょう。
保険適用外にはなりますが、ケミカルピーリングやダーマペン、レーザー治療などを肌の状態に合わせて受けることをおすすめします。
水ぼうそうの跡
小児時期にかかることの多い感染症で、罹患すると水ぶくれや強い痛みを伴う発疹ができます。
発疹によるかゆみで皮膚をかいてしまい、炎症が悪化するケースが多いです。
水ぶくれを潰してしまうと、皮膚が凸凹になったり色素沈着が起こる可能性があります。
水ぼうそうの跡を残さないためには、次のように工夫すると良いでしょう。
・かゆみ止め軟膏を塗る ・治癒後も紫外線対策を徹底 ・色素沈着を予防する |
水ぼうそうは治療が困難ですから、患部を刺激しないことが大切です。
医師の指示を守って注意深く生活すると良いでしょう。
顔の傷跡やへこみを治す方法
・手術 ・ダーマペン ・レーザー治療 など |
それぞれの治療にはメリット・デメリットがあります。
傷跡やへこみを治すためには、医師の正確な見立てのもとで慎重に治療法を選択し、適切な施術を受けることが大切です。
ここではそれぞれの方法について詳しくご紹介します。
手術
傷跡が深く重篤な場合は、傷跡をもう一度開いて縫い合わせる「縫合手術」を行います。
皮膚が足りない場合は、健康な皮膚を別の部分から採取して移植する「植皮手術」を行うことも。
いずれも、手術時は局所麻酔などを使用し、術後1週間ほどで抜糸を行います。
傷跡が目立たなくなるまでには半年~1年ほどかかるケースがほとんどです。
ダーマペン
皮膚表面に針で微細な穴をあけ、自己創傷治癒力を高めることで肌の再生を促すダーマペン。
ターンオーバーが整うことで、肌の凸凹が滑らかになります。
針の深さは症状や目的に応じて0.1mm単位で変えることができます。
機器の滑りを良くするために美容液を塗布したり、有効成分の入った美容液を使用することであらゆる悩みの改善につながります。
レーザー治療
傷跡や水ぼうそうの跡などの凹凸には、レーザー照射が適した場合があります。
レーザーで皮膚に極めて小さな穴をあけ、皮膚本来の自然治癒力を促すことで表面を滑らかにしていきます。
医療レーザー機器にはさまざまな種類があり、目的に応じて使い分けます。
例えば、フラクショナルCO2レーザーの場合、熱エネルギーを真皮まで届けることができます。
コラーゲンやエラスチンが修復され、真皮全体が活性化するといった効果も期待できます。
手術による傷跡やニキビ跡、クレーターの改善だけではなく、毛穴を目立たなくしたり、肌質を改善したりする効果も期待できます。
治療の流れ
傷跡の治療は、皮膚科や形成外科、美容クリニックで行います。
先天性のあざ、水ぼうそう、ニキビ跡、外傷による傷やへこみなど傷の状態によって治療法は異なります。
軽度なものであればケミカルピーリングやダーマペン、レーザーでの治療が可能です。
しかし、ケロイド化している場合や陥没の度合いが著しい場合は、切開や皮膚移植などの手術が必要となることも。
数ある選択肢の中から最も適した治療法を選ぶには、傷跡の状態や肌質に合った医師の的確な診断と治療プランが必要です。
カウンセリング
傷跡やへこみの状態に適した治療を受けるためには、まずは医師とのカウンセリングが欠かせません。
また、治療法によっては赤みや腫れを伴うリスクも。
最善を尽くしても、治療前よりも傷跡が目立ってしまう結果となることもあります。
そのようなリスクも踏まえたうえで、しっかりとカウンセリングを受けるようにしましょう。
診察
適切な治療法を選択するためには、傷跡の状態やへこみの深さなどを慎重に見極める必要があります。
レーザー治療を行う場合は、患部の色調に合わせてレーザーの種類を決定していきます。
傷跡が赤みを帯びている、色素沈着を伴い茶色くなっている、内出血もあり青っぽくなっている…
このように、症状によって色合いが異なることも。
へこみの度合いや瘢痕組織の有無、患部の形状に応じて、できるだけリスクの少ない施術を選択することが一般的です。
疑問点や不安要素は医師に質問し、すべて解消してから治療に臨みましょう。
治療
傷跡やへこみの治療には、ケミカルピーリングやダーマペン、レーザー治療や手術などさまざまな方法があります。
クリニックによって対応している施術が異なります。
希望する施術での治療が可能かどうか、前もって確認しておくと良いでしょう。
費用
傷跡ができた経緯や患部の状態によっては保険適用となる場合もあります。
しかし、保険が適用されないケースも多いため、治療にかかる費用は事前に確認しておきましょう。
また、治療方法によっては1度で完了するもの、複数回の通院が必要となるものがあります。
ここでは平均的な費用や回数をご紹介します。
◆レーザー治療 頻度:1~2か月間隔 回数:3~5回程度 費用:1ショット3,000円前後 |
◆ケミカルピーリング 頻度:2~3週間おき 回数:数回~10回ほど 費用:1か所2,000円前後 |
◆手術 頻度:1度で完了 回数:範囲によっては複数回 費用:1㎠で30,000円ほど |
ご紹介した情報はあくまでも一般的な平均です。
正確な回数や料金はクリニックにご確認ください。
治療前に知っておくべきこと
まずは、ご自身の傷跡やへこみの状態をカウンセリングを通してよく把握し、適切な治療法を選択しましょう。
ただし、どの治療法においても副作用やリスクはゼロではありません。
施術を受けて後悔しないためにも、事前に知っておくべきことをいくつかご紹介します。
アレルギー反応や色素沈着の可能性
ケミカルピーリングや薬剤を使った治療では、薬剤によるアレルギー反応や色素沈着のリスクがあります。
これまでにアレルギー反応を起こしたことがある方は、カウンセリングの段階で医師に伝えておきましょう。
ダウンタイムには個人差がある
治療内容によってダウンタイムの期間や症状が異なります。
例えば、切開や縫合を伴う手術を受ける場合、術後に赤みや腫れ、内出血が生じる可能性があります。
レーザー治療に関しても赤みや皮むけといった症状が出る場合も。
施術後の症状や注意事項は、カウンセリングの段階で確認しておくと良いでしょう。
日常生活に制限がかかる
・シャワー ・入浴 ・洗顔 ・洗髪 ・運動 ・飲酒 など |
施術後は日常生活が制限される可能性があります。
治療を受ける時期やタイミングは前もって計画を立てておきましょう。
また、施術後は皮膚が敏感になっています。紫外線や摩擦などの刺激を受けることで色素沈着を起こすリスクもあるので、日焼け対策は忘れずに。
傷跡修正で失敗しないためのポイント
傷跡やへこみの状態によって、適した医療機関が異なります。
まずは、ご自身の症状がどのような状態なのか、どのような治療法が適しているかを知るところから始めましょう。
受診する医療機関を選ぶ
傷跡修正は次のような医療機関で行います。
・皮膚科 ・形成外科 ・美容皮膚科 ・美容外科 など |
ニキビなどの炎症を抑えることが目的であれば、皮膚科を受診すると良いでしょう。
先天性異常の治療や、過去に受けた外科手術による傷跡を消したい場合は、形成外科を受診すると良いでしょう。
皮膚科や形成外科で行う治療は、ほとんどの場合保険が適用されます。
一方で、美容皮膚科や美容外科は、皮膚を美しくすることが目的なので、基本的に自費診療となります。
例えば、ニキビ跡や炎症後色素沈着をきれいにしたいのであれば、美容皮膚科での治療が適しています。
治療後のケアを怠らない
どの医療機関でどのような治療を行ったとしても、施術後のケアを怠れば「美」からは遠ざかってしまいます。
治療後は次のようなことに注意しましょう。
・患部の保護、保湿をする ・バランスよく栄養を摂る ・紫外線対策を徹底する など |
治療後に渡されたテーピングや保護テープ、再生テープは、医師の指示に従って使用しましょう。
軟膏などの塗り薬が処方された場合も同様です。
また、5大栄養素であるタンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラルは充分に摂取しましょう。
その他、むくみを取るカリウムや、傷の治りを促す亜鉛などを取り入れることをおすすめします。
顔の傷跡やへこみは専門の医師に相談
見えない部分の傷跡ならまだしも、顔にできてしまった傷跡は気になりますよね。
顔の傷跡修正で重要なことは、事前に医師と話し合うこと。
納得するまで質問し、しっかりと話し合ったうえで治療計画を立てましょう。
とはいえ、必ずしも理想通りにならないケースも。
より満足のいく仕上がりにするためには、選択した治療法のメリット・デメリットを理解し、理想と現実の差を縮める必要があります。
クリニックによって使用機材や治療方法が異なる場合があります。
希望する治療法に対応していない可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。
まとめ
顔にできた傷跡やへこみは、原因に関わらず深い悩みや大きなストレスにつながります。
傷跡がなくなり美しい肌が手に入ればストレスから解放され、自分に自信をもって明るい性格に変わるかもしれません。
しかし、傷跡修正治療には多かれ少なかれリスクが伴います。
まずは理想とする状態を明確にし、適切な医療機関で正しい治療が受けられるようカウンセリングを受けてみてください。
明るい笑顔と輝かしい生活を取り戻せるかもしれませんよ。