わき汗ボトックスとは
汗を止める効果があるボトックスは、夏のわき汗対策として人気があります。
まずは汗が出る仕組み、ボトックスで汗が止まる原理を解説します。
汗が出る仕組み
交感神経がコリン作動性神経に働きかけることで、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質が放出されます。
放出されたアセチルコリンがエクリン腺を刺激することで汗が出ます。
汗は皮膚に空いた穴「汗孔(かんこう)」から排出されます。
このとき、皮膚表面に常在菌や雑菌などが付着していると、汗と混ざり汗のにおいが生じます。
汗を止める仕組み
通常、活動時には交感神経が優位になるため汗が出ます。
反対に、リラックスしているときや眠っているときは副交感神経が優位になるため汗は出ません。
つまり、交感神経から出される発汗の信号を遮断すれば汗が止まるのです。
ボトックス製剤はアセチルコリンを放出する神経の末端に作用し、発汗信号を止めます。
アセチルコリンの放出が阻害されると発汗の指令が届きません。
そのため、エクリン腺から汗が出なくなるのです。
注入する量
ボトックスの量は「cc」や「ml」ではなく「単位(ユニット)」で数えます。
クリニックによって異なりますが、わき汗対策のボトックスは左右合計50~100単位ほど使用されます。
汗腺の数や汗の量、わきの面積には個人差があります。
適切な注入量はそれぞれ異なるので、125単位、150単位と増やすこともできますよ。
効果の持続期間
わきボトックスの効果は3~4か月ほど持続します。
そのため、汗が気になる夏前に打てば秋まで効果が続きますよ。
施術を受けてから5~7日ほどで効果が感じられます。
効果を感じたい時期の1週間ほど前にご来院ください。
持続期間には個人差があるので、効果を感じなくなったら追加で注入すると良いでしょう。
わき汗ボトックスの注意点
ボトックスなどの注入による施術は、メスを使った手術に比べると手軽です。
しかし、痛みやダウンタイムなど事前に知っておくべき注意点もいくつかあります。
施術中の痛み
ボトックス注入は注射器を使って行います。
チクッとした注射針の痛みがあり、その後製剤が注入される不思議な感覚があります。
痛みに弱い方や不安な方は笑気麻酔を使用することもできるので事前にご相談ください。
ダウンタイム
ダウンタイムはほとんどありませんが、施術後は蚊に刺されたような腫れや赤み、内出血が出る可能性があります。
ただ、施術箇所がわきの下なので目立つことはありません。
その他、筋肉痛のような痛みやだるさが生じることもありますが、時間の経過とともにおさまっていきますよ。
わき汗ボトックスの相場
ボトックス注射はクリニック、製剤の種類、注入量によって費用が大きく変わります。
そこで、わきボトックスで注入する平均の量、100単位あたりの相場をご紹介します。
アラガン
アラガン社製のボトックスビスタは5~10万円ほど。
製造、輸送、保管どの工程においても品質管理や温度管理を徹底しています。
しっかりと管理されていることで持続効果もそれだけ長くなります。
そのため、他のボトックス製剤に比べて料金設定が高くなるのです。
ちなみに一般的に「ボトックス」は施術名として使われていますが、実はアラガン社の商品名です。
原産国はアメリカで、眉間のしわと目尻への注入がFDA承認を得ています。
イノトックス
メディトックス社製のイノトックスの費用は4~8万円ほど。
原産国は韓国で、KFDAの認可を得ています。
通常ボトックス製剤は生理食塩水で希釈してから注入します。
しかし、イノトックスは希釈する必要がない製剤なので、クリニックや施術者による差が出にくい点が魅力です。
ボツラックス
ヒューゲル社製のボツラックスは2~5万円ほど。
ボトックスのバイオシミラー(後続商品)ということで費用が抑えられていますが、韓国のKFDAの承認を得ているため安全性や効果に問題はありません。
費用面で迷っているという方におすすめの製剤ですよ。
多汗症と汗っかきは違う?
同じ気温でも汗をかく人、あまりかかない人…
汗の量には個人差がありますよね。
では汗っかきと多汗症はどう違うのでしょうか?
多汗症とは
暑さやストレスなど明確な理由がなく汗が止まらない場合、多汗症と診断されることがあります。
日常生活に支障が出るので、どうにかしたいと思っている方もいるのではないでしょうか?
暑さで人よりも多く汗をかく汗っかき、原因不明の大量の汗で生活に影響が出る多汗症。
汗を大量にかく点では似ていますが、原因や症状が異なります。
汗が出る理由
ヒトには「温熱性発汗」と呼ばれる機能があり、体温調整のために汗をかきます。
汗をかかないと体温を下げることができません。
異常な体温の上昇は臓器に負担がかかり、命に危険が及びます。
また、「味覚性発汗」と呼ばれる汗の種類もあります。
辛いもの、刺激の強いものを食べた時に出る汗のことです。
その他にも、汗と皮脂で皮脂膜を作り、皮膚を乾燥から守るはたらきもあります。
天然の保湿剤として皮膚を保護するためにも汗は大切な存在なのです。
汗が止まらない原因
生きていくうえでとても大切な役割を果たしている汗ですが、大量に出ると反対に生活に支障が出ますよね。
なかには「精神性発汗」と呼ばれる精神的な刺激による汗もあります。
緊張やストレス、不安などが原因で汗が止まらない、といった症状です。
病気が原因で汗が止まらない可能性もあるので、症状がある方は早めに病院を受診しましょう。
多汗症とワキガはどう違う?
簡単に言うと、汗の量が気になることを多汗症、汗のにおいが気になることをワキガと呼びます。
汗の量が気になる方、汗のにおいが気になる方、両方気になる方…
ご自身の症状に当てはめてチェックしてみてください。
多汗症
全身に分布するエクリン腺から大量に汗が出ると、多汗症の可能性があります。
手のひらや足の裏に特に多く分布しているため、局所的な多汗症に悩まされている方も多くいらっしゃいます。
多汗症の最も多い原因は精神的なもの。
ストレスや緊張、精神的苦痛が原因で大量に汗が出ることがあります。
【多汗症の種類】 ・原因不明のもの(原発性多汗症) ・手汗やわき汗など局所的なもの ・全身性のもの など |
などさまざまな種類に分けられています。
ワキガ
医学的名称を「腋臭症」「アポクリン臭汗症」とするワキガ。
2種類の汗腺のうちアポクリン腺から出た汗が原因でにおいを発します。
アポクリン腺はわきや陰部、外耳道や乳首など身体の中でも特定の部位にしか存在しません。
汗自体に強いにおいはありませんが、皮膚に潜む常在菌と混ざることで独特のにおいに変わります。
まとめ
今回は、夏のわき汗対策におすすめのボトックス注射についてご紹介しました。
汗による悩みには多汗症やワキガなどがあります。
洋服への汗じみをなくしたり、においを軽減したり…
ボトックス注射を上手に活用して、暑い夏を乗り切ってくださいね。