制汗剤のメカニズム
汗を止める商品にはさまざまな種類があります。
【制汗剤の種類】 ・スプレー ・クリーム ・シート ・ロールオン ・スティック など |
このような制汗剤には、汗の悩みを解消してくれる成分が配合されています。
では、どのような仕組みで汗を止めるのでしょうか?
出口をフタする
制汗剤に配合されている制汗成分には、汗の出口である汗孔をふさぐ役割があります。
出口にフタをすることで汗が出ないようにするのです。
持続効果は、汗の量や成分の種類によって異なります。
1度の使用で長時間汗を止めておくことはできないので、複数回塗りなおす必要があります。
皮膚を清潔な状態に戻したうえで塗りなおすことが大切ですよ。
汗を減らす
制汗成分には、収れん作用があるものも。
「収れん」とは? ・肌を引き締める ・発汗をおさえる |
皮膚に制汗剤を塗ることで、汗腺を引き締めます。
汗腺が引き締まると発汗量が減るので、汗を抑えることにつながります。
殺菌
制汗成分で100%汗を止めることはできません。
そのため、においの元となる常在菌の繁殖を抑える殺菌成分も有効です。
汗に含まれる成分が皮膚に潜む菌と混ざることで独特な汗臭を放ちます。
皮膚表面に潜むにおいの元となる菌を殺菌することで、汗のにおいが抑えられます。
制汗剤に使われている制汗成分
制汗スプレーや汗拭きシートといった制汗商品には制汗成分が配合されています。
成分によって汗の止め方・肌への刺激が異なります。
代表的な成分を紹介するので、商品を選ぶ参考にしてください。
塩化アルミニウム
汗に反応するとゲル状になる塩化アルミニウムは、汗孔をふさぐはたらきがあります。
汗の出口にフタをするイメージです。
高い制汗効果が期待できますが、その分肌への刺激が強い点がデメリット。
赤み、かゆみ、かぶれを起こしやすいので、異常が出たらすぐに医師に相談しましょう。
塩化アルミニウムは皮膚科での多汗症治療に使用されています。
効果を感じるまで2~3週間かかるので、処方された外用薬を一定期間塗り続ける必要があります。
クロルヒドロキシアルミニウム
クロルヒドロキシアルミニウムは、塩化アルミニウムを改良したもの。
汗の出口を覆うことで発汗を抑制します。
塩化アルミニウムよりも肌への刺激が少なく、市販の制汗剤にも使用されています。
商品によって効果にばらつきがあるので、自分に合ったタイプの制汗剤を使用しましょう。
パラフェノールスルホン酸亜鉛
収れん作用のあるパラフェノールスルホン酸亜鉛は、毛穴や汗孔、汗腺を引き締めることで汗を抑えます。
塩化アルミニウムやクロルヒドロキシアルミニウムほどではありませんが、汗に含まれるたんぱく質と混ざり、ベールを作ることで汗の出口にフタをする効果もあります。
ミョウバン
「焼きミョウバン」をご存じでしょうか?
料理する際にアクを抜いたり荷崩れを防いだりする食品添加物として知られていますね。
そんなミョウバンには、実は制汗作用があるのです。
汗腺を引き締めることで発汗を抑えるので、ミョウバンが主成分となった制汗剤も販売されています。
食品添加物ということで安全性が高く、肌への刺激も少ないといわれています。
制汗剤に使われている殺菌成分
汗を止める成分が入っていても汗を完全に防ぐことはできません。
そのため、制汗剤には殺菌効果のある成分も配合されています。
よく使われている成分を2つご紹介します。
イソプロピルメチルフェノール
イソプロピルメチルフェノールは皮膚の常在菌である「コリネバクテリウム(好気性ジフテロイド)」を殺菌します。
皮膚にはさまざまな菌が住んでいます。
【皮膚常在菌】 ・表皮ブドウ球菌 ・コリネバクテリウム ・プロピオンバクテリウム など |
このうち、ワキガの人は「コリネバクテリウム」を持っています。
イソプロピルメチルフェノールがコリネバクテリウムを殺菌し、雑菌の繁殖を抑えてくれます。
塩化ベンザルコニウム
塩化ベンザルコニウムも同様に「コリネバクテリウム(好気性ジフテロイド)」を殺菌します。
イソプロピルメチルフェノールより強力です。
そのため、制汗剤よりもワキガ対策として使われることが多い成分です。
制汗剤は身体に悪い?
制汗剤を使うとワキガになる、乳がんになる、アルツハイマーになる…
このような噂を聞いたことがあります。
しかし、いずれも有害であるというデータはありません。
とはいえ、制汗剤を正しく使用しなければさまざまな弊害が伴うことは事実です。
制汗剤によるリスクを順番にご紹介します。
皮膚の炎症
制汗成分の中で一番強力なのが、多汗症の治療などで使用されている塩化アルミニウムです。
制汗効果が高く有効な成分ではありますが、その分皮膚への負担が大きくなります。
塩化アルミニウムの注意点として軽度のかゆみやヒリヒリ感が挙げられます。
赤み、かゆみ、かぶれなど皮膚に異常が出た場合は、使用を中止し医師の診察を受けましょう。
熱中症
制汗剤の使用方法を誤ると、熱中症のリスクが高まります。
汗には、体温調整という非常に重要な役割があります。
もし全身に制汗剤を使用してしまった場合、汗が出ず体温が上がりすぎてしまいます。
汗腺はほとんど全身に分布しており、体温調整の役割を担っています。
その中で、制汗剤を使用して汗を止めても問題がない部位は、わきの下と足だけだといわれています。
胸や腕など体温調整に関わる部位に制汗剤を使用することはおすすめできません。
わきや足以外の部位に制汗剤を使用する際は、広範囲にかからないよう注意が必要です。
汗を止めるには?
運動をしたときに出る汗、緊張した時に出る汗、じっとしているのに出る汗…
汗にはさまざまな種類があり、シチュエーションによっては迷惑なもの。
においが気になって人に近づけない、汗の量が多く紙やインクがにじむ…
このように日常生活に支障をきたすケースも。
普段から汗が気になる人は、医療機関に相談することをおすすめします。
ボトックス注射
医療機関で受けられる多汗症治療の一つに、ボトックス注射があります。
ボトックスを注入すると、汗を増加させる神経伝達物質「アセチルコリン」が抑制されます。
汗を出す汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」があります。
そのうち、ボトックス注射ではエクリン腺から出る汗が抑えられます。
注入のみの施術なので施術時間も短く、手軽に受けていただけます。
持続期間が3~4か月といわれているので、汗が気になり始める直前に施術を受けると良いですね。
汗腺の完全摘出
1度の施術で半永久的な効果を得たい方には汗腺の「完全摘出」がおすすめです。
完全摘出とはわきの汗腺をすべて取り除く治療法で、外科施術となります。
施術方法としては皮膚を4cmほど切開し反転させ、エクリン腺とアポクリン腺を一つひとつ取り除いていきます。
多汗症で悩んでいる方にも、ワキガで悩んでいる方にもおすすめの治療法ですよ。
生活習慣の改善
わき汗治療に抵抗がある方、自力で改善したい方はまずは生活習慣を見直してみましょう。
【汗腺を刺激するもの】 ・お酒やタバコ ・香辛料 ・酸味の強いもの ・カフェイン |
交感神経が優位になると汗が出やすくなります。
飲酒や喫煙、香辛料などによる刺激は交感神経を優位にします。
大量に出る汗を何とかしたいという方は、刺激物を控えてみてください。
【生活習慣】 ・適度な運動で汗をかく ・汗腺の機能を衰えさせない ・デトックスする ・充分な睡眠をとる ・リラックス時間を作る |
日頃から運動していると、サラサラとした気持ちが良い汗がかけるようになります。
寝ているとき、リラックスしているときは汗を増やす交感神経ではなく、汗を止める副交感神経が優位になります。
副交感神経が優位であれば汗は出づらいので、1日の中で少しでもリラックスできる時間があると良いですね。
まとめ
今回は制汗剤のメカニズム、制汗剤の成分、汗を止める施術についてご紹介しました。
多汗症やワキガは自分が感じる不快感だけではなく、まわりに迷惑をかけていたらどうしよう、と不安になります。
制汗剤や処方された塗り薬も効果的ですが、手軽なボトックス注射や効果が続く汗腺の完全摘出も検討してみてはいかがですか?